3-1)静的分析(Static analysis)
3-1)静的分析(Static analysis)
発明把握の第1のステップは、発明者がした発明行為の事実認定である。これを、静的分析(Static analysis)と言います。
与えられた発明情報を、課題(目的)・手段(構成)・作用効果の対応関係ルールに従い、分類・整理してみる。発明は、「課題(目的)・手段(構成)・作用効果」の対応関係毎に成立しているので、この関係を見出すことが発明把握に重要だからです。なお、最初に与えられる分析対象の発明情報としては、まだ、概念化されていない、生の発明情報、すなわち実施例である。そして、発明者から与えられた生の情報を「すべて」「もれなく」「くまなく」 ミーシー(MECE)で書き出すことが重要です。ミーシー(MECE)とは、Mutually( 相互に) Exclusive(重複せず) and Collectively(全体として) Exhaustive(漏れがない)ように書き出し、整理すること。
★ここで、上位概念化したり、一部の情報を発明とは関係ないと思い込んで、捨ててはいけません。それにより、本来把握すべき発明情報が失われてしまうからです。
https://gyazo.com/d77c7425bdfb5688a2b3562716fecfa3
例えば、Wクリップで分析してみましょう。
https://gyazo.com/75f7e34f479a5ddd975f06f1c4f6055c
https://gyazo.com/766a4b45d599dfd7b72c24a087261fe6
与えられた発明情報を整理して、課題(目的)に関する情報、手段(構成)に関する情報、作用効果に関する情報に分けてそれらの関係性を検討し、関連性のある課題(目的)・手段(構成)・作用効果を対応づける。すると、一つの対応関係毎に発明が成立していることがわかる。
対応関係の把握には、作用効果に着眼し、その作用効果を奏するための論理的前提となる発明の構成要件を見出す。ここでの検証は、発明再現性の要件を満たすか否かである。換言すると、発明の構成に欠くことのできない事項のみを見出す作業であり、もちろん、技術的完結性も行う。
この段階で、実施例レベルではあるが、課題(目的)・手段(構成)・作用効果でまとまった、構成要素群からなる発明のコア部分がわかるはずである。
参考のため、上記のダブルクリップの例を詳細に説明します。
<発明分析例:Wクリップの例>
例えば、あなたが事務用品の開発者であり、具体例として、次頁のようなクリップを発明したとす
る。このクリップは、下のような、クリップのもつ問題点を解決するために開発されたものである。 従来例1では、針金により形成された大小のリング間で書類を挟むが、数枚の紙片しか挟持で
きない。 従来例2では、従来例1より多い枚数の紙片を挟持できますが、把持部が大きく出っ張り、邪魔
になり、このクリップで閉じた書類を複数組重ねることがない。
下のクリップは、このような従来の問題を解決するために開発された。
1発明の静的分析(事実認定)
静的分析では、発明者が開発にあたって認識していた「目的・構成・効果」をありのままに記載 する。特に、各部構成については、じっくりと観察し、その構成をもれなく記載しておく。
発明者(分析者)が今認識している発明(技術)は、事実としての発明(技術)そのものであっ て、法的に抽象化された発明ではない。われわれは、具体的事実を分析して真の発明を抽出する必要がある。
https://gyazo.com/60bf3828fb92e7eeac252fe2e800c07f
https://gyazo.com/e417597be9a655b4d6c597bc889ec929
https://gyazo.com/ebe38b18dea17b27763426bac0958bac
以上を、目的・構成・作用効果の分析表にまとめてみる。
https://gyazo.com/a3362f828327973ab5da95246a802094